ゆるゆるライフ

たでくうむしむし

 最悪だ、最悪、最低だ。はぁー・・・。もう私には何の楽しみも無いよ。私のひねくれた根性はこの状況を打開する事は無いし、良くなろうと努力することは決して無い。今までの経験が物語っている。そうでなければこんなにも落ち込むこともない。

 私がこんなにも落ち込んでいる理由は、東京の私立高校それも第一志望に受かったのに2ヶ月で転校するはめになった事ではなくて、その転向した理由が父親が不倫して離婚、それで、お母さん実家に引っ越したからではなくて、転校キッカケでそれまで付き合っていた彼氏と別れたからじゃなくて、親友のチカちゃんと会えなくなったからじゃない。

 それは、お母さんの実家がド田舎だってこと!

 ココには何も無い。駅には片側しか出口が無い、西口に出るにはいちいち鉄橋を渡らなきゃいけないし(近くに踏み切りすらない)駅前の商店街も閑散として、休日でも人が数人、車が数台。店は半分ぐらい開店休業状態で、シャッターが上がらない店も沢山ある始末。店も埃っぽくて汚くて入りたくないし。商店街を少し外れると広大な田畑が広がり、ぽつんぽつんと民家がある。実に見晴らしのよい立地となっている。大型量販店に行くには車じゃないとつらい。

 あーあ、東京はよかったなぁ。お気に入りのショップもいっぱいあって、楽しいところも、遊べるところも沢山あって、ここはただただ寂しい。

 だるー。かったるー。ココの連中とうまくやってく自信ないよねぇ。って、言ってもまぁ、やってくしかないんだけどさ。

 まぁいいか、そのうち慣れるでしょ。かったるいけど、そんで、かったるく生きて、かったるい人生になるだけ。





ってそう思っていた。実際問題として私の性格でこの環境ならそうなって当然。状況が良くなる事など期待はおろか考える事すらしなかったのに・・・。

 この後の会話は転校2日目、ある疑問に対し我慢しきれずに思わず前の席の坂田さん(あまり好きな性格で無いのでこの子とはおそらく友達にはならないだろう)に聞いてしまった時の事と、その後の話

私 「あのさー、丸山さんっていったいなんなの」
坂田「えっ、あーこんにちは、わたし坂田っていいますよろしく」
私 「昨日、挨拶してもらったけど」
坂田「えー、あらためてって事で・・・・」
私 「だから、丸山さんって」
坂田「いや実は東京からの転校生って私初めてなんで緊張しているのかな」
私 「で、さー」
坂田「あっ、ナコね。ナコは誰とでも友達になるから、一緒に行って紹介してあげるよ」
私 「ナコって、あだ名」
坂田「丸山 愛子(まるやま まなこ)で、“まなこ”のナコって呼んでるの」
私 「丸山さんってさ、変だと思わない」
坂田「う~ん、別に普通じゃないかな。明るいし、可愛いと思うけど・・・あっそうだ、あるある変なとこ、ナコって『エスカレーター』マニアなんだよ。変でしょ、HP(ホームページ)を持ってて、自分で行ったいろんなエスカレーターを載せてるの、1回見せてもらったけどなんか物凄い量のエスカレーターがあったなぁ。私にはその違いは全然わかんなかったけど」
私 「それも変だけどさ、そうじゃなくてもっと変なところあるでしょ」
坂田「思い当たんないなぁ」
私 「丸山さんって、帰るとき面倒だからって3階から飛び降りてそのまま走って帰ってたでしょ。近道だからって校庭の塀を飛び越えてったでしょ、あれって2~3mはあるし、丸山さんって100mを11秒で走るってオリンピック選手じゃあるまいし、おまけに、学校のテストは全部満点、1回も間違ったことが無いって、中間、期末テストだけじゃない、どんな小テストも授業中の問題も宿題も、それでいて塾も行かず予備校も行かず、バイトと、エスカレーター巡りばかりしてるって、普通これだけ聞けば変だって思うでしょ」
坂田「まぁーそう言われればそんな気もするけど、ナコって昔からそんな感じだし。」
私 「・・・・」

 とどのつまりは本人に直接聞いてみれば良いのだ。単純にして明確な解決方
法ではないか。因みに、丸山さんとは同じクラス(席は離れてるけど)だから
直ぐに聞ける。その気になれば。

 そして、その気になった。

私 「こんにちは」
ナコ「あれ、転校生の」
私 「ちょっと聞きたい事があるんだけど」
 
 今思うと唐突で、もっと他のアプローチがあったのかもしれないけど、この時の私はこう聞く以外は何も思いつかなかった。それは、何かを渇望する気持ちがそうさせたのかもしれない。
 
私 「あなたの“正体”って何なの」

 気付くと私はそう質問していた、「正体」なんでそんな聞き方をしたのか。もしかしたらソコに何かを期待していたのかもしれない。このかったるい環境を変えてくれる何かを。

 さあ、なんて答えるだろうか。彼女が人間でない何かしらで、それを隠してるなら、話をはぐらかすだろうか。それともあっけらかんと「私は宇宙人です」とでも言うのだろうか。或いは、笑って私を馬鹿にするだろうか。丸山さんは考えあぐねてるのかと思いきや、返事は直ぐに返ってきた。思いもよらない答えが・・・。

ナコ「へっ、なにそれ、そんな“正体”って言われても困るんだけど。じゃあさ、あなたの“正体”は何なの、やっぱ人に物を尋ねるんだったら自分から言うのが礼儀だよねぇ」

・・・私の正体・・・

もしかしたらそれは、秘密をはぐらかせる為に言ったのかも知れない。(後で冷静に考えたら、丸山さんがその正体を隠すのなら、その能力も隠さなければならない訳で、全てではないにしろ能力を見せているのだから、始めから隠す意思が無いのではと思えた。実際はどうなのか分からないけど。或いはもっと裏の裏の真理があるのかなぁ)

ただ、その時の私はその言葉に囚われて何も考えられなかった。

そして、これがナコとの出会い、そして、ナコや周りの事の真実を知るのはまだ先の話だけど、これだけは言える、ナコは私のこの状況を打開してくれる。そういう存在になっていくのだ。

新着記事